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今こそ、鳥籠の中に(レクバン)

Wwishortより



お題:レクバン   雰囲気:良い年した大人が束縛してんの



バンは、14歳だ。

14歳といえば中学校だ。バンは義務教育も3分の2を過ぎたあたりだろうか。
強制的に行かされるそこ。俺にとってそこは、あまり思い出のある所ではないが、バンはそこでの楽しみ、俗に呼ばれる「青春」を享受している。

――つまり、世界があるのだ。
――俺の知らないところで、バンは違う世界に溶け込んでいる。

仕方ない、とは思う。バンの年齢からして、それは仕方ないことなのだ。こないだ、「学校は楽しいか」と聞いた。予想していた通りの答えだった。「うん、勿論!こないだだって、クラスメートの●●とLBXバトルしたんだけどさ、そいつの●●●、凄い強いんだ。俺、ちょっと負けそうになったもん。あ、勝ったんだけどね、最後は!だって、俺、LBXに関しては負けたくないから」天真爛漫。天衣無縫。純真無垢。そんな言葉たちが、脳裏を過ぎった。

――世界、俺の手の届かない、場所。
――そこでバンが、好きな奴が、何をしているのか、知りたい。

それは、当たり前の事だろう?


だからと行って、無理に聞き出すのは好きではなかった。あくまでも、バンを傷つけないで、それで出来ることなら、バンを世界から隔離してしまいたいのだ。じゃあ、どうやって?聞き出すのは嫌。だとすれば、選択肢は限られてしまう。俺がいっそ教師になってしまおうか?・・・・・・そんな馬鹿、出来る訳もない。もっと、現実的なプランが必要だ。バンを傷つけない、それで、俺も苦しまないで済む、そんな、プランが。

今日のバンは、どことなく落ち着いていた。いや、落ち込んでいる、というのが正しいのか。いつもなら、その日その日にあった出来事を細かく話してくれるのに、今日はなぜだか喋らない。むしろ、学校の事を思い出したがらないでいる様にさえ見えた。

「どうしたんだ、バン」

俺が声をかけると、バンは寂しそうな目で俺を見上げた。いつもの目じゃない、自分は1人なんだと苦しんでいるような、心細そうで、弱そうで、愛おしい目。

「今日、学校でさ・・・・・・」

ぽつりぽつりと、バンは学校であった事を話してくれた。話を聞く限り、バンに悪い点は1つもなかった。しかしバンは、相手を怒らせてしまったと苦しんでいる。嗚呼、理不尽だ。本来なら相手が悪い問題なのに、バンがこんな苦しむなんて。いつもそうだ。優しい人が損を見る世界。おかしすぎるだろう、そんなの。

やはり、世界は汚くて、酷いものだ、と。俺はその時再認識した。俺もおかしかったんだ、バンがそんな世界に出向いていくのを止めなかっただなんて!これ以上バンを苦しませてはいけない、バンは俺の大事な人だから。最初からこうすれば良かったんだ、この世界からバンを隔離してしまえばよかったんだ。何で今まで出来なかったんだろう。たとえ世間が認めなかったとしても(いいや違う)、これはバンの為なのだから仕方がない(束縛したいだけだ、自分の傍に置きたいだけ)。

「バン、こっちに来い」

突然そう言われ、バンは戸惑っていた。だが素直に立ち上がって仕切りをどかし、俺の隣に歩いてくる。嗚呼、本当に愛おしいその存在を傷つけた奴は誰だ。「そいつは、何て名前なんだ?」「●●だよ」許さない。絶対に、復讐してやる。

だが、その前にやる事があった。俺はバンを、後ろから優しく抱き寄せた。そのまま目も覆ってしまう。カウンターの下に隠された睡眠薬は、さっきバンのオレンジジュースの中に融け、今はバンの胃の中だ。

「こんな世界にいなくていいんだぞ、バン。お前は俺が守ってやるから、もう、苦しむお前は見たくないから」

バンはずるずると崩れ落ちそうになる。俺の支えが無ければ、きっともう立てないだろう。目は虚ろで、口は無防備に開いている。「れっく、す・・・・・・」「大丈夫だ、バン。お前はずっと、幸せに暮らしていればいい」もう、誰にもバンは渡さない。バンという存在も、目線も、声も、脳も、心も、身体も、何もかも俺もものだし、何一つ、誰にも渡さない!

やがてバンの目は閉じられ、静かな呼吸音だけがBlueCatsにこだまする。嗚呼、

「最期までお前を見てるからな、バン」



―――――
これは酷い、いろいろ



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2012年09月03日
コメント
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