Twishortより
お題:レクバン 雰囲気:年の差
(レックスがサターンを使用してなくて、でも復讐しようとしてる設定です。)
「お前も、もう高校生か」
そう問いかければ、バンはそうだよと胸を張りながら一冊の小さな冊子を俺に渡した。『生徒手帳』と印字されているそれをパラパラめくれば、なるほど、バンは本当に高校生になったのだと実感出来た。校則のページからは携帯についての言及が殆ど消え、服装についての言及も同じだった。担当の教員が印字されているところには、「数I」「地理」「日本史A」高校生らしいカリキュラムがずらっと並べられている。
「高校になったら俺、理系に行くんだ」
ほぉ、と思わず声を漏らした。特に文系というイメージがバンにあった訳ではないが、理系というイメージもなかった。だが、バンがどれだけLBXを愛していているかを考えれば、それ程おかしい事でもないのかもしれない。
「ぶっちゃけ、化学とかは得意じゃないんだけどね。・・・・・・で、大学でLBX工学を学んで、もっと子供達に喜ばれるようなLBXを作りたいんだ」
純真な目で未来を見据えるバンの姿に、どこか山野博士の面影を感じる。LBXに対する純粋な愛、期待、希望。LBXをただのロボットとせず、未来を見出そうとする、その姿に。
「それは良い夢だな。まぁ、俺からしたら」
バン、お前も子供だがな。いくらお前が成長していっても、俺にとってお前はずっと子供だろうし、そこから動く事はないだろう。出来れば、そのままでいてほしいぐらいだ。成長しないで、ずっと愚鈍で、純真で、子供なお前でいてほしい。
――出来る事なら、俺のする事の邪魔にならないような、そんな存在になってほしい。
味方になってほしい、同じ世界を見たい。そんな気持ちは、許された事ではないと理解しているから。そもそも、バンと"こんな関係"にある事自体許された事ではない。だから、せめて、邪魔にならないでほしい。もし邪魔になってしまったら、俺は、気が狂うだろう。
バンを傷つけたくない。でも、やりたい事の邪魔をする奴は許せない。そんな奴は全員始末してやると誓っている限り、俺はこの苦しみから逃れる事はなく、そして俺は、この誓いを破る気もない。
どことなくバンの表情が暗い事に、俺は意識をバンに戻した。「どうした?」と問うても、バンは首を緩やかに横に振って「ううん、何にも」と優しく微笑む。・・・・・・嗚呼、そんな顔をしないでくれ。その、何でも受け止めようとする、その顔。その顔を見ると俺は、いつも罪悪感に身を焼かれてしまうから!俺は、バンにとても酷い重荷を渡しているんだと、罪悪感に身を焼いて死んでしまいたくなる!
原因は分かっていた。俺はいつまでもいつまでもバンを「子供」と認識し続けるだろうし、バンはそれが苦しいのだろう。いつまでも俺と同じ土俵にすら立てない。それが苦しいのだろう、分かっていた。
バンを「子供」と認識し続けるのは、偏に俺の弱さと欲望が原因だ。バンが同じ土俵に立ってしまったら、俺は思うままにバンを貪ってしまうだろう。「大人と子供」許されない愛だと己を留めないと、理由がないと、俺は今だってバンをこの胸の中に押し込んでしまいそうだ。
それに、怖かった。バンはいつか、俺の総てを知るのだろう。その時、俺はこの手でバンを潰さなくてはならない。それが、怖かった。だったら、ずっとバンを土俵の外に出してしまえばいい。そうしたら、バンは俺の総てを知る事なく、俺に愛を叫び、求め続けてくれるだろう。
「ねぇ、レックス。俺はいつまでレックスにとって子供なの?」
ポツリと呟かれた言葉に、俺は背を向ける。珈琲を作りながら、俺はバンに見えないように微笑んだ。きっと今の顔は、醜い。
なぁ、バン。俺にとってお前はずっと子供だよ。そうでなくてはならないからだ。俺はお前を愛してる。お前と違って、これは独占的な愛なんだ。お前をずっと俺の傍に縛り付けたい。でも、お前はそうじゃない。いつか俺の傍から出て行って、世界を知って、事実を知って、俺に立ち向かうだろう。それは真実という武器を持って、だ。俺はその時、負ける。そう、俺たちに「勝者と敗者」「敵同士」という確固たる溝が生まれてしまうんだ。
それを、俺は望まない。だから、バン。俺は永久にお前を『子供』という枠に閉じ込めて、俺の土俵に登らせないようにしているんだ。
「さぁ、な」
薄い笑顔を顔に貼り付ける。濁された答えに、バンは不満げに俺から目を逸らす。その顔はまだ子供で、俺は皮肉にもその不満げな顔に安堵を覚えてしまった。
―――――
二重苦みたいなのに悩まされてるレックスでした。
バンの事は大好きだけど、敵になりそうだよなー、じゃあ敵にさせなきゃいいやー、みたいな。
お題:レクバン 雰囲気:年の差
(レックスがサターンを使用してなくて、でも復讐しようとしてる設定です。)
「お前も、もう高校生か」
そう問いかければ、バンはそうだよと胸を張りながら一冊の小さな冊子を俺に渡した。『生徒手帳』と印字されているそれをパラパラめくれば、なるほど、バンは本当に高校生になったのだと実感出来た。校則のページからは携帯についての言及が殆ど消え、服装についての言及も同じだった。担当の教員が印字されているところには、「数I」「地理」「日本史A」高校生らしいカリキュラムがずらっと並べられている。
「高校になったら俺、理系に行くんだ」
ほぉ、と思わず声を漏らした。特に文系というイメージがバンにあった訳ではないが、理系というイメージもなかった。だが、バンがどれだけLBXを愛していているかを考えれば、それ程おかしい事でもないのかもしれない。
「ぶっちゃけ、化学とかは得意じゃないんだけどね。・・・・・・で、大学でLBX工学を学んで、もっと子供達に喜ばれるようなLBXを作りたいんだ」
純真な目で未来を見据えるバンの姿に、どこか山野博士の面影を感じる。LBXに対する純粋な愛、期待、希望。LBXをただのロボットとせず、未来を見出そうとする、その姿に。
「それは良い夢だな。まぁ、俺からしたら」
バン、お前も子供だがな。いくらお前が成長していっても、俺にとってお前はずっと子供だろうし、そこから動く事はないだろう。出来れば、そのままでいてほしいぐらいだ。成長しないで、ずっと愚鈍で、純真で、子供なお前でいてほしい。
――出来る事なら、俺のする事の邪魔にならないような、そんな存在になってほしい。
味方になってほしい、同じ世界を見たい。そんな気持ちは、許された事ではないと理解しているから。そもそも、バンと"こんな関係"にある事自体許された事ではない。だから、せめて、邪魔にならないでほしい。もし邪魔になってしまったら、俺は、気が狂うだろう。
バンを傷つけたくない。でも、やりたい事の邪魔をする奴は許せない。そんな奴は全員始末してやると誓っている限り、俺はこの苦しみから逃れる事はなく、そして俺は、この誓いを破る気もない。
どことなくバンの表情が暗い事に、俺は意識をバンに戻した。「どうした?」と問うても、バンは首を緩やかに横に振って「ううん、何にも」と優しく微笑む。・・・・・・嗚呼、そんな顔をしないでくれ。その、何でも受け止めようとする、その顔。その顔を見ると俺は、いつも罪悪感に身を焼かれてしまうから!俺は、バンにとても酷い重荷を渡しているんだと、罪悪感に身を焼いて死んでしまいたくなる!
原因は分かっていた。俺はいつまでもいつまでもバンを「子供」と認識し続けるだろうし、バンはそれが苦しいのだろう。いつまでも俺と同じ土俵にすら立てない。それが苦しいのだろう、分かっていた。
バンを「子供」と認識し続けるのは、偏に俺の弱さと欲望が原因だ。バンが同じ土俵に立ってしまったら、俺は思うままにバンを貪ってしまうだろう。「大人と子供」許されない愛だと己を留めないと、理由がないと、俺は今だってバンをこの胸の中に押し込んでしまいそうだ。
それに、怖かった。バンはいつか、俺の総てを知るのだろう。その時、俺はこの手でバンを潰さなくてはならない。それが、怖かった。だったら、ずっとバンを土俵の外に出してしまえばいい。そうしたら、バンは俺の総てを知る事なく、俺に愛を叫び、求め続けてくれるだろう。
「ねぇ、レックス。俺はいつまでレックスにとって子供なの?」
ポツリと呟かれた言葉に、俺は背を向ける。珈琲を作りながら、俺はバンに見えないように微笑んだ。きっと今の顔は、醜い。
なぁ、バン。俺にとってお前はずっと子供だよ。そうでなくてはならないからだ。俺はお前を愛してる。お前と違って、これは独占的な愛なんだ。お前をずっと俺の傍に縛り付けたい。でも、お前はそうじゃない。いつか俺の傍から出て行って、世界を知って、事実を知って、俺に立ち向かうだろう。それは真実という武器を持って、だ。俺はその時、負ける。そう、俺たちに「勝者と敗者」「敵同士」という確固たる溝が生まれてしまうんだ。
それを、俺は望まない。だから、バン。俺は永久にお前を『子供』という枠に閉じ込めて、俺の土俵に登らせないようにしているんだ。
「さぁ、な」
薄い笑顔を顔に貼り付ける。濁された答えに、バンは不満げに俺から目を逸らす。その顔はまだ子供で、俺は皮肉にもその不満げな顔に安堵を覚えてしまった。
―――――
二重苦みたいなのに悩まされてるレックスでした。
バンの事は大好きだけど、敵になりそうだよなー、じゃあ敵にさせなきゃいいやー、みたいな。
| 13:31
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