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皆さん、あけましておめでとうございます!

とうとう1年という区切りがつきました。個人的にとても素晴らしい1年で、様々な分野で「芽生えた」年だったので、今年はそれを成長させてやるような1年にしたいです。

今朝、初詣に行ってきました。お神籤で大吉をとれて、嬉しいような、年始早々に運を使ってしまったような(笑)

2013年、巳年。今年も黙々とレクバンを書いていこうと思います。これからも当サイト「俺たちのディスタンス」をよろしくお願いします!


(今更下書きを見つけました。とりあえずその当時の日付でUPします)



こんばんは、太鼓の達人のせいで人差し指の付け根の皮が剥けてSAN値が毎時間減っているあかくしです。

今日、友人Aと共にイナダンを観てきました。開始1分で号泣したので多分Aにドン引きされてます。仕方ない、感動したんだから。
私はもうイナイレは観ていないのですが、今でも円堂世代の彼らが大好きで大好きで・・・・・・豪炎寺さんとか本当にもう懐かしくて大好きです。「ごうえん」で変換すると「豪円」になる私のパソです。
詳しい感想は追記欄に書き留めるとして、まぁ、ネタバレにならない程度の感想をぼそぼそ。

今回の敵サイドであるあの3人、全員可愛いですね!特に私とAはサンちゃん推しなのですが、冷静になると私はフランちゃんが1番好きです。
それと、イナダンテレフォンはヒロくんでした。そして3回電話したら、10日の19時に電話をくれるとの事。私のiPhoneの連絡帳には「大空ヒロ」というのが登録されています。登録した時の友人のドン引き具合はとても面白かったです。...
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ちゃぷ、触れた足から伝わる冷たさに、バンは肩を強張らせてその足を直ぐに退けた。冬の海は流石に寒いだろう。周りに人の気配は察せられず、俺たちの砂を蹴る音しか聞こえない。

「冷たいか」

「うん。凄い冷たい」

バンはしゃがむと、海水を掌で弄び始めた。掬われた海水は、するするとその指の間から音を立てていく。ぱちゃぱちゃ、ぱちゃぱちゃ。目を閉じて身を暖めれば、まるで幼子が弄んでいるかのように聞こえる音。手を抜けていった海水は、きっと暖かいだろう。嗚呼、海水が全てバンの体温まで温かくなればいいのに。そうすれば、まるで胎内に還るかのように俺たちは・・・・・・。

「頑張ろうね」

バンは微笑んで、俺の手を掴んでそっとその足を海水に浸けた。俺も続いて、足を浸ける。じゃば、じゃば。音はもう騒がしくて、嗚呼。俺はもう幼子ではないのだ、と。当たり前の事なのに、何故か心が痛む。――羨望、なのかもしれない。幼子の純真を持って死ねるバンに対する、羨望。

じゃばじゃば。ちゃぱちゃぱ。海水をかき分けて、一体俺たちはどこに向かっているのか。終着点が見つからないのだ。歩いて、歩いて、いずれは泳いで、行き着く先に見えるのは何だ。ない終着点に希望を寄せていた。きっとそこには大きな何かがあるのだろう。それは渦であり、光であり、島であり、口であり。俺たちはそこに飲み込まれて幸福に死ねるのだ、と。

「レ、ック、ス」

海水が丁度バンの喉元でたゆたっていた頃、バンが突然苦しそうに俺の名前を呼んだ。嗚呼、子供には少し効き目が早いのかもしれない。

「苦しいか」

問うと、バンは首を横に振った。そんな訳はないはずなのに。遅効性の毒がやっと効いたのだろう。ふと、自分も咳をした事に気付く反射で口を押さえた手についたそれに、俺は笑う。俺も子供になるのを、神は許してくれたのか。

口から漏れる血が、海に融けて消えていた。そして気付く。海が異様に赤い事に。バンはそれが言いたかったのか。さっきからバンの目は、海と太陽に釘付けになっていた。

「分からなくなるじゃないか」


やがて俺の胸が海に沈む頃、バンはとうとう限界がきた。ふと俺の肩を掴む力が弱まった事に気付いて、俺は慌ててバンを支える。互いの口元や胸元は真っ赤で、俺もそろそろ限界かもな、と自嘲する。嗚呼、赤い。俺たちのすぐ横にる太陽も、俺たちを融かす海も、俺たちの体液も、全て、全て。

「らい、せ、う、まく、い、かな」

息も絶え絶えに呟くバン。「ああ、うまくいくさ」俺の言葉は、終着点と同じだ。ありはしない、嘘っぱちの、空虚な嘘。でも、それが俺たちを救う。嘘のみが俺たちを救えるのだ。

「だいすきだ、よ」「あ、あ。あいして、る」

互いの最期の言葉。嗚呼、結局彼は、最期まで俺を見てくれない。いや、見てくれてはいても、俺の望むものは最期まで手に入らないままだ。つぅ、と伝った涙も最期に吐き出した血も、全て海の赤色に混じってしまって。


最期まで、思いは、伝わらないまま。




夕暮れに混じりて
(涙も血も、見えなくなってしまったから)

薄暗い部屋、スイッチを押せば、椅子に腰をおろして眠る愛しい姿。口から微かに零れる寝息に俺は微笑んで「レックス。ただいま」レックスは目を開けて俺を捉えると、「ああ、おかえり」と微笑んだ。
「今日は、久しぶりにジンと会ったんだ。立派になってたよ。――って会社、あるだろ?あれ、ジンの会社なんだ。それに、郷田も親の仕事を継いでた。面白いのが、仙道が秘書やってるんだよ。似合わないよね。でも、ああ見えて細かい事は得意だったから、案外天職なのかも」
レックスは何も言わずに、ただ微笑んでいる。時計の針は、午後3時を指す。
「ああ、おやつにしようか。今日、良い豆が入ったんだ。俺、もうレックスよりも美味しい珈琲、淹れられるようになったかな」
キッチンに立って、珈琲を淹れる用意をする。棚からクッキーとカップを取り出して、皿にクッキーを並べる。そうすれば珈琲が出来上がって、カップに注ぐ。良い香りが漂うそれらを運べば、レックスは嬉しそうに「ありがとう」と笑う。
「さぁ、食べて。このクッキー、わざわざお店に並んでゲットしたんだ」
レックスの手が、カップを取って口に運ぶ。だけど、テーブルに戻されたカップの中身は減っていない。
「あれ、おいしくなかった?」
「いや、そんな事はない」
「もしかして、具合良くない?」
「大丈夫だ」
嗚呼、きっと無理をしているんだ。あんな事があった後だから、まだ心の傷がふさがっていないんだろう。サターンであった事は、確かに俺たちに傷をつけた。でも、大丈夫。俺が支えるし、時間が解決してくれるから。
「明日は、一緒に水族館でも行こうか。丁度、近くの水族館がリニューアルしたんだ」
クッキーが減っていく、全て、俺の手によって。レックス、どうしたの。最近、全然ご飯を食べないじゃないか。そろそろ何かを食べないと、死んでしまう。ねぇ、レックス。どうしたの。声をかけようとしたその時。レックスの肩に触れた手に付着した、それ。

「すまない、バン」

――思考が、理性が、カチリと音を立てて、崩れた気が、した。

レックス、どうしてレックスは濡れてるの?もしかしてと窓を見遣れば、さっきまでの晴天とは打って変わって土砂降りの雨。きっと、洗濯物を取り込んでくれたんだ。ああ、ここまで日常的な生活をレックスを過ごせるなんて!「ありがとう」呟けば、レックスは緩やかにその手を俺の背に伸ばす。暖かい、融けて崩れてしまいそうなレックスの身体を抱き留める。ああ、レックス。俺、レックスが大好きだよ。だから、ずっと、ここに・・・・・・



誰もが最期は独りだ
(それに例外はないのに!)




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現実を見事にスルーしたバンさんのお話でした。