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マイノリティの反逆(レクバン)

Twishortより



お題:レクバン   雰囲気:こんな世界壊してやる



「バン。世の中は実に不平等だ」

時計の音が鳴る。レックスは、やけに落ち着いた瞳で俺を見つめていた。その声は酷く自棄的な雰囲気を纏っているのに。

「なんで、そう思うの」

俺が問うと、レックスは1枚のプリントを俺に差し出した。世界地図が何色かに分けられている。オーストラリアやカナダ、北欧やヨーロッパは青いのに対し、アフリカの方はオレンジや赤に染まっている。アジアは、そもそも染まってすらいない。一体何を指し示しているのか。アイコンタクトで問うと、レックスは微笑んで俺に教えてくれた。

「それは、同姓婚が認められているか否かの地図なんだ」

言われて世界地図を見直すと、確かに、と思う。アフリカ辺りは宗教の関係上、認められていないのだろうか。だとすれば、赤は否定している。青は・・・・・・

「青が、同性婚を認めている国々。じゃあ、染まっていない国々はなんだと思う」

「・・・・・・そもそも、同性婚の問題に触れていない、とか?」

正解だ。レックスは微笑んで、俺の頭を撫でてくれた。でも、その撫でる力はいつもより弱くて、俺を見つめる瞳もどこか虚ろだ。

「アジア――いや、大半の国が、まだ問題に触れようともしていないんだ。自分たちがマジョリティである事に何の疑問も感じず、ただその状況を甘受し、マイノリティを受け入れず、排他しようとする」

ぼんやりと、レックスが何を言いたいのかが分かってきたような気がした。きっとレックスも俺も、マイノリティと言われる立場にいるんだ。それは、今まで培ってきた経験、今の恋愛状況、色々な条件が合わさっている。――どうして、同性婚は、同性愛は認められないのか。生物学的に無意味?女の方が良い?そんなの違う。人間の純粋な本能の前に、どんな学問も意味を成すとは思えない。もし人間が本能を抑えられるなら、戦争も紛争も何も怒らず平和だろう。それが出来ないから、戦争は絶えないんだ。

ただ、好きになった人が同性だった。それだけで、俺たちはこうやって本音を隠して、こそこそと生きなくてはならない。男と女、そう違いはないだろう。ただ身体のパーツに違いがあるだけだ。人間が犬を見た時に、オスとメスの区別がすぐに出来るか?出来ないだろう。きっとそうなんだ。動物から見たら、神から見たら、男も女も等しく人間。俺たちが歩んできた『進化』という城が、それを拒んだせいで、男女は明確に区別されるようになってしまった。

そんな世界になってしまったのは、どうしてだろう。それは、分からない。俺たちに出来るのは、来世に願う事。それだけだ。

「さぁ、バン。同じ景色を見に行こう。きっと俺たちなら出来る。新しい世界は、こんな、無味乾燥で残酷な世界にならないようにするんだ。俺たちが、なおすんだ」

コックピットのスイッチを押す。大げさな音を立てて、サターンが飛び出す。ねぇ、レックス。俺、レックスと同じ景色が見えるよ。レックス、貴方はずっと寂しかったんだね。だからこんな事をするんだ。だから、俺が傍にいてあげるよ。1人は、きっと苦しかっただろうから。




――――――
無償の愛とか色々突っ込んだ結果がこれ。
作中の地図は授業で習ったのを思い出して引用しました。ぐーぐる先生で『世界地図 同性婚』と検索すると実物が見れますよ。



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2012年09月03日
コメント
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