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このまま、お前の目が(レクバン)

Twishortより



お題:レクバン   雰囲気:悲願



朝日が俺たちを照らしていた。カーテンの隙間から届く朝日に、俺は目を開ける。隣ですやすやと寝息を立てるバンは起きる気配もなく、俺が動く音とアナログ時計の秒針の音しか聞こえなかった。

隣で眠るバンの胸が上下する。リズムの乱れないその寝息は、子供のそれそのものだ。普段いくら着飾っても、子供には思い試練を乗り越えたとしても、やはり人間は、寝ている時は無防備なのだろう。

「なぁ、バン」

声は届かない。バンの寝息が、妙に俺の心を落ち着かせる。バンの口は半開きで、目は閉じられている。この目から見える景色は、どれほど大きいのか。きっと、総てのものが美しく見えるのだろう。空はどこまでも続き、人は笑顔で、夕暮れには哀愁を見、夜なんて見ないで眠るのだろう。嗚呼、俺とは本当に真逆の存在だ。いつからだろう。朝日を憎み、空の大きさに恐怖し、夕暮れに自分を重ね、夜を見つめるようになったのは。

太陽がどんどん高い位置に昇っていく。バンは太陽だ。きっと、どんどん高みに昇っていって、俺なんて見えないぐらいに高いところに行くんだろう。俺はどんどん深みに嵌っていく。それはバンが高みに昇るほど、だ。バンが太陽に近づき美しくなる程、俺は人の絶望に近づき汚れていく。

そんな俺がバンの隣で眠り、共に朝を迎え、愛を育む。大罪だな、と1人自分を嘲笑った。俺はバンの隣にいていい存在ではない。俺は1人で生き、死ぬべきだったのだ。どこで間違ってしまったのだろう。

「それは、生まれたことさ」烏がベランダのフェンスの上に立って言った。「生まれた時点で、間違ってるんだよ」嗚呼、そうだな。そもそも生まれて来なければ良かったんだ。生まれなければ、俺はこんな苦しい思いをしないですんだ。こんな、辛い現実に、愛に、気付かずに済んだ。だが、逆もある。俺は生まれたから、愛を知れた、信頼出来る仲間を知った、この世を知った、それは生まれてこなければ、分からないことだ。それに、生まれなくては、バンと会えないではないか。そう考えれば、生きるのも悪くないかもしれない。――――かも、しれない。けど。

「なぁ、バン」

呼びかける。勿論返事はない。不思議と笑みが零れた。傍からみたら、きっと眉も下がって、悲しそうにしているのかもしれない。でも、笑みは確かに零れていた。

「このまま、お前の目が開かなければいいのにな」

そうすれば、お前は俺を見ないで済む。バン、お前には仲間がいる。俺がいなくても、生きることの素晴らしさを教えてくれる仲間がいる。俺にはいなかった。だからかもしれない。仲間がいるお前が羨ましくて、傍で見ていたくて、一緒のところまで来てほしかった。それが本人に良い影響ではない事ぐらいは理解していた。それでも、それでも。

「そうすれば、お前は俺から逃げられる」

バン、なぁ、バン。お前のその純真な目で俺を見ないでくれないか。その目で見られる度に、俺はしてはいけない期待をしてしまうから。お前が俺と一緒にいてくれるなんて、してはいけない期待をしてしまうから。

太陽はいよいよ、部屋の窓から見えなくなってしまった。俺はたったそれだけの事なのに発狂しそうになって、ただただバンの頭を撫でるしかなかった。そうでもしないと、存在が、なくなりそうな感じがして。



――――――
毎回書いてる事が同じになってきてるよね???このクズくし



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