Twishortより
お題:レクバン 雰囲気:甘い……かも
「あの人は、死にました」
「世界平和を望む時、『あの人の死』は必須条件でした」
その時何が出来たのか。それは、世界平和だとか人権だとか、『答えのない問題』と言われるジャンルにカテゴライズされると俺は思う。ずっと考えないと分からない、ずっと考えても分からないかもしれない、終わりのない、まるでぐるぐると続く螺旋の様な問題。
――多分、俺、言葉を探してる。
ぽつんと浮かんだ思いは、誰にも理解されなかった。『おはよう』『こんにちは』『こんばんは』『さようなら』『初めまして』『よろしく』『大丈夫?』『どうしたの』日常的な言葉、その中に埋もれてしまった、大事な言葉を探している。それは、レックスに言いたかった事。言えなかった事。大好き?愛してる?そんな言葉じゃない!もっと身近で、それでいて暖かい言葉を、俺はレックスに伝えるべきだった。
それが分からない限り、俺はずっと心のどこかを沈めながら生き続けるだろう。レックスに伝えられなかったという事実だけでもう潰されてしまいそうなのに、伝える内容が分からないなんて論外。
耳鳴りがする。空を見れば天気が良くなかったから、そろそろ雨が降るのかもしれない。どうしよう、家まで走って帰るしかないか。鞄の中に、傘のある気配はない。靴を履きながら、ぼんやり考える。うんうん悩んでいたら、クラスメートが近くにやって来て「バン、お前傘ないの?」と聞いてきた。俺は頷く。言葉を零したくなかった。零したら、伝えたかった事も零してしまいそうな恐怖があったから。「これ、貸すよ」クラスメートが、紺色の傘を俺の前に差し出す。レックスの髪の色に酷く似た、紺色。
「ありが――――」
呟いた瞬間、俺は一気に視界が開けたような錯覚を覚えた。嗚呼、俺は馬鹿だ。なんで気付かなかったんだ!ずっと探していた言葉、それは本当に身近で、暖かい言葉。俺はずっと、これを言いたかったんだ。灯台もと暗しとはまさにこのこと。
『ありがとう』
レックス、ありがとう。俺にLBXを教えてくれて。美味しい珈琲を飲ませてくれて。色々な人達と会わさせてくれて。俺と真摯に向かい合ってくれて。
ずっと、言いたかった。でも言えなかった。そのままレックスは、帰ってこなくなってしまった。照れくさかった。でも、あの時が最後だと分かっていたなら、言えたのかもしれない。
もう、そんな事を言っても遅いとは知っている。レックスの時間は、もう止まってしまったから。俺の時間は止まらない、どんどん進んで、いずれはレックスを追い抜いてしまう。忘れたくない、忘れられないとは分かっているけれども、あの珈琲の匂い、レックスの時たま見せる屈託のない笑顔、そんな日常的な事は、どんどん忘れてしまうかもしれない、と。……雨が降り始めていた。いつか、雨が急に降り出した時、Bluecatsにお邪魔したっけ。
――――今、気付いた。
日常的な事総てに、レックスとの思い出がある事に、やっと気付いた。それだけレックスは、長い時間を俺に費やしてくれたという事。笑顔が抑えられなかった。不思議と、涙はもう出ない。出きってしまったのかもしれない。
雨は降り続ける。借りた紺色の傘を、俺はしっかりとした力で開いた。
――――――
14歳っていう歳は、まだ基盤を固めてる時期で、その時に色々教えたレックスは、バンの基礎みたいな所に入り込んでて、それはプラスにもマイナスにも取れるんじゃないかな、って。
お題:レクバン 雰囲気:甘い……かも
「あの人は、死にました」
「世界平和を望む時、『あの人の死』は必須条件でした」
その時何が出来たのか。それは、世界平和だとか人権だとか、『答えのない問題』と言われるジャンルにカテゴライズされると俺は思う。ずっと考えないと分からない、ずっと考えても分からないかもしれない、終わりのない、まるでぐるぐると続く螺旋の様な問題。
――多分、俺、言葉を探してる。
ぽつんと浮かんだ思いは、誰にも理解されなかった。『おはよう』『こんにちは』『こんばんは』『さようなら』『初めまして』『よろしく』『大丈夫?』『どうしたの』日常的な言葉、その中に埋もれてしまった、大事な言葉を探している。それは、レックスに言いたかった事。言えなかった事。大好き?愛してる?そんな言葉じゃない!もっと身近で、それでいて暖かい言葉を、俺はレックスに伝えるべきだった。
それが分からない限り、俺はずっと心のどこかを沈めながら生き続けるだろう。レックスに伝えられなかったという事実だけでもう潰されてしまいそうなのに、伝える内容が分からないなんて論外。
耳鳴りがする。空を見れば天気が良くなかったから、そろそろ雨が降るのかもしれない。どうしよう、家まで走って帰るしかないか。鞄の中に、傘のある気配はない。靴を履きながら、ぼんやり考える。うんうん悩んでいたら、クラスメートが近くにやって来て「バン、お前傘ないの?」と聞いてきた。俺は頷く。言葉を零したくなかった。零したら、伝えたかった事も零してしまいそうな恐怖があったから。「これ、貸すよ」クラスメートが、紺色の傘を俺の前に差し出す。レックスの髪の色に酷く似た、紺色。
「ありが――――」
呟いた瞬間、俺は一気に視界が開けたような錯覚を覚えた。嗚呼、俺は馬鹿だ。なんで気付かなかったんだ!ずっと探していた言葉、それは本当に身近で、暖かい言葉。俺はずっと、これを言いたかったんだ。灯台もと暗しとはまさにこのこと。
『ありがとう』
レックス、ありがとう。俺にLBXを教えてくれて。美味しい珈琲を飲ませてくれて。色々な人達と会わさせてくれて。俺と真摯に向かい合ってくれて。
ずっと、言いたかった。でも言えなかった。そのままレックスは、帰ってこなくなってしまった。照れくさかった。でも、あの時が最後だと分かっていたなら、言えたのかもしれない。
もう、そんな事を言っても遅いとは知っている。レックスの時間は、もう止まってしまったから。俺の時間は止まらない、どんどん進んで、いずれはレックスを追い抜いてしまう。忘れたくない、忘れられないとは分かっているけれども、あの珈琲の匂い、レックスの時たま見せる屈託のない笑顔、そんな日常的な事は、どんどん忘れてしまうかもしれない、と。……雨が降り始めていた。いつか、雨が急に降り出した時、Bluecatsにお邪魔したっけ。
――――今、気付いた。
日常的な事総てに、レックスとの思い出がある事に、やっと気付いた。それだけレックスは、長い時間を俺に費やしてくれたという事。笑顔が抑えられなかった。不思議と、涙はもう出ない。出きってしまったのかもしれない。
雨は降り続ける。借りた紺色の傘を、俺はしっかりとした力で開いた。
――――――
14歳っていう歳は、まだ基盤を固めてる時期で、その時に色々教えたレックスは、バンの基礎みたいな所に入り込んでて、それはプラスにもマイナスにも取れるんじゃないかな、って。
| 13:18
前の記事
2012年09月03日
次の記事
2012年09月03日
コメント