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時間、おいてけぼり(レクバン)

Twishortより



お題:おいてけぼり   テーマ:時計



埃を被ったカウンター、テーブル、棚。軽やかに入店を告げるチャイムベルは、今も昔も変わらない。

「レックス」

名前を呼んでも、返事はない。いないからだ。この店にもいないし、この世界からも姿を消してしまった。

「俺、ここで良くLBXいじってたね」

1年前の俺が見える。カウンター、飲めない珈琲を必死で飲んで、ぼんやりとオレンジのかかった灯りの下でLBXをカスタマイズしている俺。

「レックスの時計は、俺のものだ」

1年前の俺が、にんまりと目に光を射して言う。吐き気、嫌悪の催すその顔に、俺は下唇の鉄の味を吐き出した。違う。レックスの時計は俺たちと同じだ!

「レックスは、俺の時計と同じだよ……」

時は等しく人々に時間を与える。そうでなきゃ、神は本当に不公平だ。レックスを置いていってはいけない。レックスは、俺の大事な人だ。

「俺達は離れない。レックスの時計も俺の時計も同じだ。同じ時計を見ているんだ。お前なんかに、レックスは渡さない!」

1年前の俺が笑う。そして、消えた。残ったのは、埃にまみれた俺の指定席と俺だけ。

ほろりと、涙が頬を伝った。俺は何をしてるんだろう。寂しかったのかもしれない。レックスを置いてけぼりにしてはいけない、なんて言っておいて、本当に置いてけぼりになったのは俺の方じゃないか。



――――解説―――――
時計=時間を表すもの。
「レックスの時計は俺のものだ」……レックスの時計、つまり時間は俺のもの。
レックスは死亡したという仮定で、レックスの時の流れとバンの時の流れは違う訳で、
それを『おいてけぼり』と感じたバンさんの一人劇。
途中出てくる"1年前のバン"は、レックスと時を共有する事が出来たバン。
→1年後(ダン戦W)のバンにとって、その頃の自分は凄く幸せで、同時に嫉妬の相手にもなり得るんじゃないかなという妄想。



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